(元)三留女子大生の毎日

しごと、たべもの、すきなこと。

我が世の春はここに

遡ると長い。

彼は東京の私大を卒業して就職で関西にやってきた一つ年下の男の子で、一部上場の大手メーカーの技術職。私がペアーズを再開してすぐのときにいいねをくれた。

自分で言うのもなんだけど、私は結構な数のいいねを貰うようになっていて、その日もいつものようにいいねをさばいていたけれど、彼のところで手が止まった。プロフィールは空欄だったし写真も一枚だけだったけど、なぜか気になったのだ。顔が好みだったから。「絡まないならいいねしないで」というコミュニティに入っていたのも気になったので、マッチングして、メッセージのやりとりを始めた。
彼は思った以上に好青年で、毎日きっちりメッセージやLINEを返してくれた。こちらがどんなに自虐的になっても励ますような言葉をくれたし、とても褒め上手で人を不快にさせない。質問もうまいので会話がスムーズに続く。穏やかでコミュニケーションがうまく、普通にモテそうだなあ、というのが彼の印象である。あと、文面にひらがなが多くて女子みたいで可愛かった。

 

はじめて会ったのは先週の日曜日だった。夕食だけの予定だったけど、会う前から彼のことを気に入っていたので、父の日のプレゼントを一緒に選んでほしいとお願いした。少し早めに待ち合わせたものの、彼は関西の地理に不慣れで、今いる場所がわからないと電話をかけてきた。それを頼りに彼を探し出し、無事に合流した。その後、父へのプレゼントを買い、彼のリクエストに応えていろいろなお店を見て回った。ネクタイピンが欲しいと言うので、近くの百貨店で一緒に選んだ。居酒屋で夕食を取り、彼の元彼女のことやこれまでの恋愛について聞いたり、私の話をしたりした。翌週に会う約束をして、終電で帰った。帰り際に手を振ったら、不意打ちで手をつながれて死んだ話はしましたね。

 

そして、昨日。前半は違う男の子と青と黄色の要塞に行った。若くて面白い男の子で、楽しかったけど、正直付き合うとかはないなという感じだった。思ったより早く解散したので彼にLINEすると、もう来てるよと言われて焦った。ごめん、歩き疲れて休憩してると言うと、じゃあゆっくりしてていいよ、そこまで行くから待っててと言われた。ちゃんと彼は来てくれた。途中、好きなブランドのショップがあってついつい見ちゃったと嬉しそうに教えてくれた。

夕食のとき、前に付き合ったもののどうしても好きになれず友達になることを選んだ男の子の話を彼にした。その子は本当にいい子だった。私が突然逆上してもきちんと謝って話を聞いてくれたし、私のクソみたいな過去を知っても普通に接してくれた。「本当にいい子」以外の何物でもなかった。だけどと言うか、だからと言うべきか、私は彼のことを友達以上に思うことができなくて、失恋したショックで一度付き合うと返事をしたものの、1ヶ月ももたずに別れたのだ。この話も、また後日。
あと、彼の前の彼女の話ももう少し詳しく聞いた。どこで知り合ったのか、どんな人だったのか、何ヶ月くらい付き合っていたのか。彼は誤魔化さずにちゃんと答えてくれた。聞いてちょっとざわざわしたけど、もう別れてるんやからと必死で自分に言い聞かせた。

夕食の後、夜景を見たいから海の方へ行こうと言われ、電車で移動して海沿いに出ることにした。もう少し話がしたいからとスタバで飲み物を買って海のそばに出た。腰を下ろしてから話の続きをした。友達になってしまった男の子の話をぽつぽつ振り返っていたら、唐突に彼が私に聞いてきた。
「ちっぴーちゃんにとって、友達とそうじゃない人って何が違うの?」
「えっ。なんだろう、私の性癖に刺さるか刺さらないかかな」
「性癖ってどういうこと?」
「まあ、好みみたいなもの(笑)。ストライクゾーンは広いけど、その子はなんでか入らなかったの」
「そっか。そこに入るか入らないかってどうやって分かるの?」
「んー、会ってるときにドキドキするかしないかかなあ」

「そっか。じゃあ、今はドキドキしてる?」

してるよ、と言いかけて、思わず彼を見返した。なんか変なこと言った?みたいな顔をしてこっちを見ていたので、とりあえずどついた。
その後、何を聞かれたか理解して恥ずかしくなって顔が見れなくなった。その聞き方はずるいとか、先に言ったら負けみたいでやだ(もうこの時点で負けてる)とかなんとかもごもご言った気がする。そしたら、

「俺はしてるよ。ねえ、どう?」

彼はあっさり言ってのけた。負けるが勝ちってこういうこと?私は信じられない思いで、ハンカチに顔を埋めてたっぷり一分くらいまたごねた。その間、彼はにこにこ笑いながらこっちを見て待っていた。私は観念してようやく負けを認めた。
「してなかったら今日来てないし、明日も会いたいなんて言わないよ!わかるでしょ!」
本当にいたたまれなかった。私はまたハンカチに顔を埋めてごねた。ツンデレだー、と隣で彼が嬉しそうに言うのが聞こえて、もう耐えられなかった。

「恥ずかしがり屋さんなんだ」
「うるさいなぁ……!!」

私はその日一日で20回くらい死んだと思う(良い意味で)。

 

彼は前々から、「見た目なんて最初の2秒くらいしか見ないよ」と言っていた。その分かなりこだわりがあって、その2秒で好みか好みじゃないかが決まるという。はじめて会った日、待ち合わせの場所がわからなくて電話して私の声を聞いたときは、思ってたのと違うと感じたという。でも、顔を見たとき、それこそ2秒で好きな顔だって思った、と教えてくれた。
私は電話で声を聞いたときに、2秒でこの声が好きかもしれないと思った。探し出して顔を見てあっと思った。高い鼻、切れ長の優しい目、きれいな横顔、全てが性癖にぶっ刺さってきた。この顔、いや、この人のこと好きかも。そう思った時点で負けだったのだ。

帰りの電車を待っているあいだ、待合ではお互いにどうしていいかわからなくて、黙ったり照れたりを繰り返していた。私はずっと落ち着かなくて、顔を覆ってみたり他愛もない話で場をもたせようとした。そんな私の左側に座った彼は、落ち着きなくハンカチをいじっていた。
左手が寂しかったので、思い出したように手を出して、彼を見ながら左手をふらふら降ったら、彼の右手が伸びてきた。自分でお願いしておいて、恋人繋ぎは恥ずかしかったから普通につなぎたかったのに、気づいたら指の間に指が入ってきて死にたくなった。でもびっくりするくらいしっくりきて、ときどき力が籠もるのがたまらなく嬉しかった。こんな簡単に手を繋いでくれるなら、もっと早く言ったら良かった。後で彼に聞いたら、手をつないでほしいとアピールされたとき内心は穏やかじゃなかったことや、それでもつないだら不思議としっくりきて落ち着いたということを話してくれた。実は「ドキドキしてるの?」の件のあと、何度か手をつなごうとしたらしい。バカヤロー!ちゃんと言ってくれないとわかんないだろ!!


そして、まだ会って二回目の今日でどうしてこうなってしまったんだろう、という話をした。彼が言うには、

最初に会ったときに「もう一回くらいご飯とか行きたい」って言われてなかったら、もう駄目だと思って次は誘わなかったと思う。だから、あのとき誘ってくれて正解だった。1日目、『何時に帰ってほしい?』と聞かれたときに遅くまでいてもらってよかった。遅かれ早かれいずれは進展させていただろうけど、夕食のときに「友達に戻ってしまった男の子」の話を聞いて、自分も結構当てはまってるかもしれないって焦った。このままダラダラ会い続けてたら友達になってしまう(異性としてみてもらえなくなる)かもしれない。わかりやすく好意は示してくれてるけど、本当はどう思ってるか分からない。だから友達とそうじゃない人の違いって何って、俺はどっちなんだろうって聞いちゃった。間違ってなくてよかった。

ということだった。聞いている間、私が良くも悪くも死んでたのは皆さんお察しかと思うけれども、彼はわりとそういうことを臆面もなく言えるタイプらしい。逆に、私は本人を目の前にすると恥ずかしくて好きも言えないタイプなので、そこら辺はがんばってねと言われた。

正直なことを言うと、元々彼以上に性癖にぶっ刺さる人がこの世の中にいるはずがないと思ってたし、いたとしても付き合うなんて無理だと思ってたので、この結果にまだ現実味がない。なんとなくふわふわして浮ついてて、早く顔が見たくて仕方ない。そんなこと、友達になってしまった男の子のときには全く感じなかったから、自分の気持ちに正直になって、きちんと無理だと伝えていてよかった。本当に恋愛はタイミングと運と縁だなあ〜と思わざるを得ない。

 

いや〜、ペアーズ再開してよかった!!!!(結局そこ)